使える数理リテラシー

使える数理リテラシー

使える数理リテラシー

私が大学3年生で進学したときにちょうど杉本先生は退官された (という記憶がある) ので,杉本先生から直接授業などで教わったことはないのですが,4年生のときのインタビューに杉本先生は応じて下さり,それはとてもよい経験でした.
専門を深めていってタコ壺に陥るのか,見晴らしのよい山頂に至るのかという話があり,そこから教育の役割について話が展開しました.本書からも先生のもつ後者の視点が見られます.

この本はもともと放送大学のテキストであったものに加筆修正を行ってできてます.そのため,普通の高校生が読むのは難しいと思います.一通り高校の数学と大学1年生前期ぐらいの数学と物理を勉強した人が読むにはちょうどよいかもしれません.

この本でいう「数理リテラシー」を万人が数理リテラシーと呼ぶのかどうかは分かりませんが,内容としては,数 (すう) や量に対する理解,単位 (次元) に対する理解,変化・運動・状態に対する理解,統計データに対する理解を扱っています.「数学リテラシー」ではなくて「数理リテラシー」としたことにも著者の哲学が込められている気がします.

私自身が学生のときから思っていることの1つに「数学を使う人は数学者 (数学を作る人) 以上に数学を理解しなければならない」ということがあります.そうでないと,数学が間違った使われ方をされてしまいます.様々な場面で直接的であれ,間接的であれ,数学を使う立場の人が気に留めておくべきことが多く書かれた本だと思います.