公平分割の法則

公平分割の法則―誰もが満足する究極の交渉法

公平分割の法則―誰もが満足する究極の交渉法

  • 作者:ティーブン・J.ブラムス,アラン・D.テイラー,宍戸栄徳,Steven J. Brams,Alan D. Taylor,宍戸律子
  • 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
  • 発売日: 2000/06
  • メディア: 単行本
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10月のコンプ研の招待チュートリアル講演で紹介されていたので,購入して読んでみた.「The Win-Win Solution: Guaranteeing Fair Shares to Everybody」の邦訳.

このように専門的な内容を扱った一般向け書籍が1800円で売られているということが素晴らしい.縦書きだからだろうか.しかし,この縦書きが曲者で,数式が漢数字で書いてあると,読み取ることがほとんど不可能で,辛い.そして,途中で方程式が出てくるけど (中学1年並みの1次方程式),ここだけは横書きになっている.これなら,全部横書きにしてくれればよかったのに,と.

しかし,内容は素晴らしく,章構成も明快である.公平分割とは何なのかということを説明し,方法として,交互取り,分割選択,勝者調整という3つの手法を紹介する.そして,それらが実際の場面でどのように応用されるのかを解説している.最後の応用の部分は恣意的である感じもするけど,その際に明らかになる問題点などを示しているため,読後の不快感はほとんどなく,むしろ恣意的であったと思えた部分が必然的にそうだったのかも,と感じさせられてしまう.3つの手法を説明する部分では,いわゆるtoy exampleで説明し,最後に実際の政治的・経済的・外交的な状況を具体例で説明しているところはうまい.

さて,ふりかえってみると,これはアルゴリズムの本である.公平な分割を実現するためにはどのような手順 (すなわちアルゴリズム) を踏めばよいのか,ということを議論しているからである.そして,証明みたいなものも書いてある.(ちなみに,証明をこの本に含める必要はないかもしれないけども,誰かが証明しているということは非常に重要である.証明がなければ保証はないからである.) しかし,いろいろな例を用いて,どのようにアルゴリズムが動くのかを注意深く記述しているので,分かりやすい.著者の力量と訳者の注意深さに敬服した.(こんなに褒めていいんだろうか.)