アルゴリズム・サイエンス 入り口からの超入門

この本を連日宣伝してるため,どこかからのまわしものかと自分が疑われそうですが,決してそうではありません.

先日特にお薦めした「まえがき」ですが,浅野先生の本書のページにも載っています.
そのページの「まえがき」は実際の本に載っているものと若干違うようですが,大枠は同じです.
お薦めです.

アルゴリズム・サイエンス 出口からの超入門

こちらも読みました.
いろいろな場面でお世話になっている岩間先生の最新書で,アルゴリズム理論の普通の教科書では触れられないけども,専門家にとっては常識になっている「考え方」を学べる本です.

さて,この本の用途ですが,教科書として使うのはなかなか勇気がいると思います.私としては学生の自主セミナーでの輪読書,あるいは,独学書としての利用をお薦めします.

各章の内容ですが,私が知ってることも知らないこともどちらも比較的単純な例題を用いているため理解しやすくなっていると思います.とても楽しく読めました.これからアルゴリズムの研究を始めるような学生の方には強く推薦します.

ちなみに本書第11章で書かれてるオークションについては私が(英語で)書いた解説記事がどこかの(英語の)本に掲載されるはずなのですが,まだ出版されていないようです.本当に出版されるのかどうか不安になってきました….

1点気にしたい点はゲーム理論に関する部分です.まず「social welfare」が「社会的繁栄」と訳されていますが,経済学では「社会厚生」とするのが一般的ではないでしょうか.Roughgardenの「price of anarchy」を「無秩序によるコスト」と訳すために英語の方を変更して「cost of anarchy」としてしまったのも少し乱暴に感じました.またメカニズムデザインが「非常に新しい分野」(145ページ)であるかどうかも少し疑問に思います.そのページにある「メカニズム」の説明も経済学の人が思うメカニズムとは何かずれている気がしないでもないです.ちなみに「アルゴリズムゲーム理論」と「メカニズムデザイン」は全く違う意図を持った全く違う分野だと私は思っています.重なる部分はもちろんありますが.

演習問題に解答がついていないのもよいです.岩間先生の博識と独特な言い回しが楽しめる一冊でした.